2009年1月29日木曜日
THE LIVINGALL EUROPEAN CONFERENCE報告3
LivingAllプロジェクトでは、EU各国で共通の質問紙を用いて、disableな人を対象に大規模な調査をしていました。縦断的に同様の観測を行うことで、時間的にも空間的にも、比較可能なデータベースをつくることができです。質問紙の強みを生かした方法だと感じました。
異なる文化を持つ人々に対して、共通項目を用いて調査をすると、知能指数の測定に関する議論のように、特定の文化に有利(or 不利)に働くような恒常的なバイアスを生むこともあります。その点について、概念定義や質問項目の練り上げ、翻訳と再翻訳による同質性の向上、大規模なサンプリング、インタビュー調査との相互検討など、時間をかけて質の良い質問紙調査を実施する努力が印象的でした。質問紙調査は実施すれば何らかの数値結果が出ます。しかし、練られていない項目で得られた数値は、意味がありません。意味のない数値が独り歩きすることへの恐れをもち、調査の質を常に向上しようとする姿勢は学ぶべきだと感じました。
このように、大規模調査をすごいと思う一方で、同じ調査を日本(or アジア)でも実施し、他のアジア諸国やEU諸国と、意識調査の結果を比較することの意義は、今の私にはまだ見えていません。確かに平均値を比較すれば、上位国と下位国が出てきます。しかし、違う対象(=各国での実情)を、違う各国の国民が判断した結果の比較検討には、限界があるように思います。今回の報告では触れられなかった、優れた実践を選ぶ際の選考基準や、インタビューで得られたであろう満足/不満足の理由が知りたいです。またEUでの優れた実践が、日本でも良く機能するとは限りません。
このプロジェクトの成果を、個々の研究者や実践者が自国に持ち帰り、どのように社会に還元していくのか。私自身が試されている気がします。
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