2009年1月28日水曜日

THE LIVINGALL EUROPEAN CONFERENCE報告2

このカオは ライオンなのか イヌなのか

 LivingAllプロジェクトでは、障害者や高齢者に焦点を当てています。そして「彼/彼女のために何が必要か」ではなく、「彼/彼女を含めた、できるだけ多くの人々のために何が必要か」を問います。この「市民の多様さ」と「障害者と健常者の関係性」への配慮は印象的でした。

 「科学技術への市民参加」と言ったとき、私の持つ市民像には偏りがあったように思います。障害、年齢、国籍、社会的立場、地域、関心、知識など、すべての属性を考慮できないにしても、700万人の障害者、2560万人の高齢者、215万人の外国人登録者を抱える日本に住むにしては、市民の多様性への配慮が不十分だったと思います。

 また関係性についても「障害者と健常者」「市民と専門家」など、AとBを対立する概念として捉え、その差異点に眼を向けて区別しがちでした。だから「障害者のための技術」という発想もあった気がします。しかし実際は、その両者には類似点も多くあります。その視点に立てば「障害者を含むできるだけ多くの人々のための技術」という発想となります。インクルージョン、ユニバーサルデザイン、メインストリーミングなど、この会議で強調されたコンセプトは、私に差異点と類似点を意識する際のバランスを取り戻してくれたように思います。

 同時に「健常者による障害者の保護」ではなく「価値観や視点の異なる他者との協働」という構図で、両者を捉えることも重要だと改めて感じました。どちらかを優先的に支援するのではなく、対等に参加できる共通基盤をつくるのです。では、対等とは、どのような状態なのでしょうか。悩みは深まるばかりです。

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