2008年4月11日金曜日

3月11日(火)RISTEXシンポジウムの感想

阪大の中川です。

散歩をしたくなるような春の陽気にもかかわらず、シンポジウムは立ち見が出る程の盛況ぶりでした。

 個人的に面白かったのは、第2部のパネルディスカッションでの北大の吉田さんの話の中に、「社会リテラシー」という言葉が使われていたことです。吉田さんは北海道でGMOに関する様々な会議に関わってこられた方で、その経験を多く語ってくださいました。その話の中で、「専門家の社会リテラシーと非専門家の科学リテラシーはペアで向上していった。」という内容のことを話されていました。

 この場合「社会リテラシー」は「非専門家が言うことを聞き、考えていることを読みとり、話し合おうとする態度をとれ、話し合える能力」ということになるのでしょう。人とディスカッションをすることが多いはずの研究者の社会リテラシーが低いというのは、おかしな話だと思いました。他人とのディスカッションの中で、相手の意見に耳を傾けることで、新しいアイディアが生まれるという経験をしているだろうからです。何にこだわって、専門家(研究者も含む)は壁を作るのだろうと思いました。吉田さんによれば、自分の意見が変わってしまう、そんな「変化が恐い」のだそうです。それは非専門家も同じようですが。

 吉田さんは、経験から「専門家が歩みよると、市民が歩みよる。でもその逆はみられなかった。」ともおっしゃっていました。歩みよりのキーは専門家が持っているようです。両者を隔てる壁が「恐さ」のせいであるならば、壊せるのは作ったご本人しかいないはずです。専門家の方々には是非とも壊して頂きたいなと思う次第です。以上、ちょっとした感想でした。

2008年3月14日金曜日

AAAS年次総会(ボストン)報告

阪大の春日です。
 アメリカでの科学技術コミュニケーションに関する議論を調べるために、ボストンで行われたAAASの年次総会に行ってきました。
 参加レポートをNPO法人サイエンス・コミュニケーションメルマガに掲載しました。
 下に転載しますのでご覧ください。
 また、私個人のブログでも私的な感想を掲載しています(その2その3)。


2008年AAAS総会「グローバルな視点からの科学と技術」報告:
準国家機関としてのAAAS、あるいは、なぜアメリカでは科学者が社会のために努力するのか? 

 2008年2月14日から18日という日程で、ボストンにおいてAAAS(全米科学振興協会:http://www.aaas.org/)の年次総会が開催された。このメルマガの読者であればすでにご存じの通り、AAASは1848年に設立された非営利団体で、「すべての人々の利益のための、世界中の科学、技術、イノベーションの振興」をミッションとしている。総計一千万人以上にのぼる構成員を抱える262団体がメンバーである。また、一般には世界のトップ・ジャーナルとして知られる「サイエンス」誌の発行元として知られている。

 今回、機会があってAAASの年次総会に参加したのでここにご報告する。

*年次総会ウェブサイト
http://www.aaas.org/meetings/

 アメリカ政界にはプロのロビイストが多数活躍しており、クライアントの要望を国政に反映させるべく日々活躍している。これは科学者も例外ではなく、AAASの重要な活動の一つに、若手の自然科学者に資金を提供して政策フェローとしてワシントンの各種組織に送り込むことなどがある。これは、政権が変わると科学技術政策なども激変するアメリカの事情を反映している。例えば現在のブッシュ政権下では、国防関連の研究開発が延びる一方で、その他の研究開発費用は減額されてきている。また、幹細胞など生命科学系の研究は制約される傾向にある。また、気候変動問題については、大規模な取り組みを行うことがアピールされているにもかかわらず、現実の研究費は延びていないという不満も聞かれた。こういった問題について科学者や関係機関が相互に情報交換し、ロビイングにつなげていくのがAAASの大きな目標の一つである。

 その一方で、会場ではニコラス・ネグロポンティなど著名な科学者の講演、150を超える数のシンポジウムやワークショップ、キャリアセミナーや各学協会の会合、そして一般向けや、特に子ども向けのイベント(あるいは子ども達による)発表など、無数のイベントが行われている。シンポジウムではありとあらゆる科学的なトピックが扱われるが、今年度のテーマが「グローバルな視点からの科学と技術」だったせいもあり、気候変動を初めとする環境問題、貧困や第三世界の社会問題(特にアフリカとHIV)に関係するシンポジウムが多数開催されて、熱心な討議が行われていた。

 AAAS会長デヴィッド・バルティモア(生物学 カリフォルニア工科大)の基調講演でも、第三世界の人々の生活は向上されなければならないこと、しかしそれが過度に環境負荷の高い方法で行われないようにしなければならないことが述べられ、そのために会長自身がインド(環境負荷の高い成長の事例と言うことであろう)とルワンダを訪問し、意見交換を行ったことが説明された。その後、ルワンダ大統領自身が登壇し、研究開発への期待も説明された。

 他にもAAASはクウェートとの「アラブの女性リーダー」に関する会議や中国政府との「科学倫理」に関する会合、イノベーション政策に関するヴェトナムとの会合、科学と社会に関する欧州委員会との会合を行うなど、積極的な国際交流を行っている。評議会での報告では、これらの交流について、AAASのカウンターパートになるのはほとんどの場合各国の「科学省」に相当する機関であり、「科学省」を持たないアメリカでAAASが疑似省庁(Quasi-ministry)の役割を果たしているという状況が指摘されていた。

 NGOであると同時に疑似省庁であるAAASというのは、ある意味で、非常に自信に満ちた見解であり、アメリカの科学者達が目指しているものや置かれている状況をよく表しているだろう。これを反映して、評議会では人権問題にも多くの時間が費やされた。科学技術の倫理的な側面や、各国の科学者がおかれている状況について、これまで多くの研究が重ねられており、今後もそういった努力は続いていくだろう。ただし、ここには単純な理想主義ではなく、アメリカ社会の深刻な状況も反映している。よく知られているように、アメリカでは宗教右派が政界に大きな影響力を持っており、学問の自由に対して抑圧的であると見なされている。そこで、科学者達は常に学問の社会的意義を問い直し、それを表明していく必要性に駆られているわけである。特に、進化論は宗教右派と科学者の抗争の最前線であり、AAASでも多くの議論が交わされていた。

 一方で、人権や社会的利益を追求することの見返りが存在しているという側面も指摘出来る。例えばアフリカの問題などは今や世界最大の非営利財団であるビル&メリンダ・ゲイツ財団が積極的に支援を行っている。このため、第三世界の健康問題には大きな予算がついている。こういったことは、研究開発費が(企業による営利活動以外は)国費に限られており、研究費の分配も政府による戦略的な配分か、割り当てられた予算を科学者たちで分配する科研費に限られている日本ではあまり考えられない。日本でAAASのような試みが自発的に行われてこなかったのは、研究費の総額が天下りで決まっており、配分に関して口を出す業界メンバーはより少ない方が良い(逆に、世間をいくら巻き込んでもビル・ゲイツのような資金提供者は現れない)という事情が影響しているとは言えるだろう。

 そうしてみれば、「科学技術コミュニケーション」という面でも、アメリカでは常に科学者が科学者以外のジャーナリストや政治家、法律家、慈善事業家たちを科学のシンパにしておかなければいけないというモチベーションが働くのに対して、日本では研究費にアクセスする権利を持った小数の同業者達以外のものを議論に参加させまいという力が働くと見ることも出来るのではないだろうか? 現実問題として、AAASに参加している科学者たちが科学をアメリカの文化として根付かせようと言う活動にこれまでも極めて熱心だったのに対して、日本の科学者達は極めて閉鎖的であるという非難を受け続けてきた。残念ながら、ノンアカデミック・キャリアを選ぼうとした瞬間に、指導教官から「じゃあ博士号はいらないね」と言われたり、そこまで酷くなくても指導がいい加減になるというのはよく聞く話である。自分の分野を理解し、場合によっては博士号を持った議員、弁護士、ジャーナリストなどが活躍することが、自分の研究分野にとってどれだけエンパワーメントになるかを考えれば、そういう可能性を自分から封じてしまうのは馬鹿げているだろう。しかし、そういった機感を日本の科学者が共有するようになってきたのは、極めて最近のことである。

 社会一般(General Public)と価値を共有する努力というのは民主制の基本であるが、そういった意味では日本の大学や科学者個人はまだまだ欧米から学ぶところが大きいと言えるだろう。また、日本では「人権」というと机上の空論と見る向きが大きい。もちろん、アメリカ社会が「人権」の名の下に戦争を起こすような矛盾を抱えていることも事実だろうが、「理想」を空論として遠ざけるだけででは異なる価値観を持つ人々や社会の間でのコミュニケーションが成り立たないのも事実である。理想が完全に実現しないとしても、すこしでも理想に近づくための努力はあるはずだし、理想を追求することが自分たち自身のエンパワーメントにもつながる、という信念にも見習うべき所があるだろう。また背景に「個別の理想の可否は兎も角、個々人が理想を追求することが結果として社会を良くするのであり、その追求には一定のインセンティヴが維持されるべきだ」という哲学が存在していることも見逃すべきではないだろう。

2008年2月8日金曜日

サイエンスショップ研究員(「市民と専門家の熟議と協働のための手法とインタフェイス組織の開発」研究員)公募

以下のとおり、本研究プロジェクトの研究員を募集します。
募集期間が短くて申しわけありませんが、たくさんのかたのご応募をお待ちしています。


 サイエンスショップ研究員(「市民と専門家の熟議と協働のための手法とインタフェイス組織の開発」研究員)公募
http://cscd.osaka-u.ac.jp/activity/view/125

 平成19年10月より始まった下記の研究開発プロジェクトの推進のために、研究員を募集します。科学技術と社会、大学と地域を結びつける仕事に熱意を持って取り組んでくださる方を求めます。

▼研究開発プロジェクトの概要
・研究開発プロジェクト名
  「市民と専門家の熟議と協働のための手法とインタフェイス組織の開発」
  ((独)科学技術振興機構 社会技術研究開発センター 研究開発プログラム「科学技術と社会の相互作用」平成19年度採択事業)

・研究代表者
  平川秀幸(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター准教授)

・研究実施期間
  平成19年10月1日 〜 平成24年3月31日

・研究開発目標
  環境問題やエネルギー問題、食品安全問題など、科学技術が関連する現代社会の問題に適切に対処し、解決していくためには、専門家や政策決定者、企業、市民活動団体や個々の市民など、多様な主体が交わる「公共コミュニケーション」が不可欠である。これを促進するために本プロジェクトでは、公共コミュニケーションの支援を市民と共同で行う「インタフェイス組織」を大学に設立し、他大学にも移転可能な事業モデルとして提示することを目的とする。このため、特に科学技術の専門家と市民の関係に焦点をあてて、これまでの我が国の公共コミュニケーションに不足している「熟議(熟慮と討論: deliberation)」と「協働(collaboration)」のための手法を新たに開発し、既存の手法と合わせて手法ライブラリと手法の運用マニュアルを整備する。同時に、組織の運営基盤の研究開発を行い、総合的な公共コミュニケーション支援を行う体制を構築する。


▼募集要項
・仕事の内容
  市民と研究者・学生のあいだを仲介し、適切な研究プログラムの立案を行う(サイエンスショップ職員業務)。および、それらの業務について、科学技術コミュニケーションという立場から分析を行い、日本においてサイエンスショップを確立することに資する研究を行う。

・勤務の形態
  週24時間以上の非常勤

・任期
  1年任期(更新あり)

・職位
  特任研究員

・募集人数
  1名

・応募資格
  1) 本研究開発プロジェクトの趣旨に賛同し、社会と大学のコミュニケーションを促進することに尽力して頂ける方
  2) 次の内、いずれかの条件を満たすことが望ましい。
   * 修士号以上の学位を保持し、科学技術コミュニケーション研究に携わる意志のある方
   * 企業の社会貢献部門やNPOなどで2年以上の実務経験を有し、大学の社会貢献などに関心のある方。

・募集期間
  2008年2月7日 〜 2008年2月20日(応募書類は、2月20日必着でお送りください。)

・着任時期
  平成20年4月1日以降のなるべく早い時期に着任出来ること

・応募書類
  履歴書(市販のもので結構です)
  業績リスト(あれば)
  代表的な論文、著作等(最大3編)のコピー各1部(修論・博論は不可)
  志望動機を述べたエッセイ(2000字以上)

・応募書類の送付先
  565-0826
    大阪府 吹田市千里万博公園1-1
    大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
    平川秀幸
    電話:06-6816-9494
    (送付の封筒に「サイエンスショップ研究員応募書類」と明記すること)

※お問い合わせは下記のフォームからお願いします。
 http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/inquiry/