本ブログをご贔屓にして頂き、ありがとうございます。
はじめまして、山内(やまのうち)と申します。
6月1日より、大阪大学に異動してまいりました。サイエンスショップに関わる実践・研究を担当したします。よろしくお願いします。
さて、6月14日(土)・15日(日)に、北海道大学「遠友学舎」で、第5回科学技術コミュニケーション デザイン・ワークショップが開催されました。今回は、ワークショップに参加して感じた、悩ましい3つの疑問を報告いたします。
1.協働を成功させる条件とは?
「市民を集めただけでは『対話』は成立しない」(北海道大学・吉田さん)との指摘には、とても納得がいきました。現在、対話や協働という言葉が、流行語のように使われています。しかし心理学の研究が明らかにしてきた限りにおいては、協働が“成功”(←何を成功とするのかは難しすぎるので、今回は勘弁して下さい)するのは、それほど一般的な現象ではなく、限られた条件(例:参加者間の関係性、課題の構造)の下で実現するといわれています。「3人寄って文殊の知恵を超える」か、「船頭多くして、船、山に登る(←これはこれで凄い!)」かは、一概には言えないのです。どういった目的の科学コミュニケーションが、どういった条件下で成功しやすいのか?「現場での実践」と「基礎的な実験や調査」を両輪にして、明らかにしたいと考えています。
2.事例を比較するために、どのような枠組みが必要か?
ワークショップで問われた「『科学技術』に関する市民参加の特殊性とは何か」は、考えれば考えるほど複雑な問いです。これに答えるには、何らかの枠組みを用いて事例を並べ、比較する必要があります。2日目のグループワークの課題は「市民参加が必要なテーマを挙げて分類し、それぞれ、どのような市民参加手法が有効なのかを考える」という、まさにその枠組みを考える課題でした。そこで気づいたことは、「遺伝子組み換え食品」「原子力発電」「年金問題」といった対象ベースで考えていては、分類できないということです。むしろ、問題の対象よりも、扱う問題の構造(初期状態・解決手段・目標状態・制約)の方が、市民参加のスタイルを決める重要な要因のように感じられました。そこで難しいのは、参加する市民側なのか、実施者側なのかによって、問題構造に関する認識が大きく異なることです。それぞれが、どういう問題として認識しているのかを明らかにし、そのギャップを議論が可能な程度まで埋めるには、どのような論理や知識が求められるのか。悩みは尽きません。
3.持続するために、どのようなシステムが必要か?
実践発表の中で、不安の1つとして挙げられたのが「持続可能性」です。質・量ともに安定した科学コミュニケーションというサービス、それを実現するための人材(専門家・運営スタッフ)および運営資金や機材・場所を持続するコストは低くありません。さらに社会に参加型手法に対する新規ニーズを引き出すシステムも重要です。日本でも活躍している非営利団体が、どのように運営を成り立たせているのか、経営学的視点からの検討が不可欠だと感じています。阪大サイエンスショップの試みでも、「ショップを経営する」という視点が欠かせません。阪大サイエンスショップが、長く皆様に愛される店になるように、経営努力にも努めたいと思います。そこで培った「科学コミュニケーションというサービス」のマーケティング手法を、苦労や失敗も含めて広く伝え、役立てて頂ければ幸いです。
読んで頂き、ありがとうございました。書き足らない部分がありますが、それはまた別の機会に書きたいと思います。それでは、また。
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